目を大きく閉じて
新宿三丁目のハプニングバーに行ってきた。オタクとの飲み会のノリで。
23時か0時ころに入店。入会金と利用料金で9,500円くらい(?)取られた。酔っていたのでうろ覚え。
店内は薄暗く、ゴテゴテした内装のお洒落めなバーといった風情だった。
それまで、ハプニングバーの店内は映画『アイズワイドシャット』の儀式シーンのような空間をイメージしていたので、ソファで男女が酒を飲みながらただ談笑している様を見て拍子抜けした。
↓『アイズワイドシャット』の儀式シーン
カウンターで飲み物を貰い、ソファに座り、近くにいた若い男性2人組・三十路くらいのふくよかな女性2人組とどうしてここに来たのか、お友達同士なのか、など取り留めの無い会話をしていた。
客の脳内にはエロいことしか頭に無いのかと思いきや、そうでもなかった。
空間の特性上か、ボディタッチは一般的な空間に比べると多かった。
初対面でもぐいぐいパーソナルスペースに入ってくる。人の体温を感じたのは久しぶりだった。
知らない人達と酒を飲み、くつろぎながら話をすることは既に経験があって何だか懐かしい気がした。
どこで経験したかな、と考えユースホステルやゲストハウスの類であることに思い当たった。
他人に関心が無い、人と人の繋がりが無いと言われる現代の都会において、気安いコミュニケーションを促す旅先のゲストハウス的な施設がこんなところにあった(来店の目的が何であれ・・・)。
話は戻り、先ほどの女性達・男性達と話している内、女性の片割れが若い男性をそれとなく誘惑しはじめた。
店内が暗くよく見えなかったが、男性はイマドキな雰囲気で割とイケていた。
誘いに応じるかな、と思ったがのらりくらり躱していた。女性はあまり美しくなかった。
性的な関係を結ぶにあたり、美しくないことは罪だった。
ソファ席以外にもカウンター席があって、客が1人だけ座っていた。
自分のことを棚にあげて言えば、冴えないおじさんだった。
レンタルビデオ屋のAVコーナーによくいるような、エロイことは大好きだけど、生身の女性に触れる機会はあまり無く、あっても風俗だけ・・・といった、年季の入った負のオーラを放つおじさんだった。
おじさんは1人ぽつねんと座っていて、女性に話しかけようともしていなかったので他人の行為を見に来ているのだろうと思った。
世の中にはいろんな性的嗜好を持った人がいるものだ。パソコンの画面越しでは味わえないライブ感を楽しんでいるのだろう。
そうこうしている内に連れのオタクが女性と良い雰囲気になり、プレイルームに消えていった。
今までの人生で最も滑らかに「性の悦びを知りやがって」というフレーズが口をついて出た。性の悦びを知りやがって。
いつの間にか、 フロアの真ん中で若めの男性が全裸に目隠しを付けた状態で横になっており、その人の性器(中々見ない程の立派なサイズ!)を刺激してイカせようとするゲーム(?)が始まっていた。
上はYシャツ、下はパンツ一枚という非常にあざとい恰好の、比較的かわいらしい女性が手や口で刺激していた。
多少の妬み嫉みはあったかもしれないが、赤の他人の性行為を間近で見せつけられるのは気持ちのいいものではなかった。
その内、ブリーフ一丁のおじさんが現れ、同様に男性のイチモツを手でしごいたり、口に含んだりし始めた。サービスを受けている本人は目隠しされているから分からないだろうが、どんな気持ちだっただろう。
倒錯した性を目の当たりにし、気分が悪くなった。
25歳、彼女無し、土曜の深夜に他人の性行為を眺めている・・・。
見たくないものを見ないように目を閉じていたら眠りについていた。
起きると既に朝5時頃であり、閉店の時間になっていた。
場のムードを作っていた暗めの照明とは打って変わって、風情も容赦も無い蛍光灯で店内が照らされていた。
店内の照度が変わったこと、ほとんどの客が店を後にしていることから、先程までと同じ空間とは思えなかった。
多少華美なきらいはあるもののお洒落めに見えていた内装も、ただ無機質で悪趣味なインテリアにしか見えなかった。
もしかすると、『アイズワイドシャット』よろしく、先刻まで見ていた光景は夢だったのかもしれない・・・と馬鹿げたことを考えた。
店を後にし、たまたま見かけたうどん屋でかすうどんを食べた。
朝5時過ぎにも関わらず、店内は満員だった。安くてかなり美味しかったのでそれだけの人気があることに不思議は無かった。
うどんを食べながら、性の悦びを堪能し、賢者タイム真っただ中のオタクが「世界の真理が見えるようになった」と熱弁するのを聞いていた。
ハプニングバーで行為に及ぶと世界の真理が見えるようになることを自分はその時初めて知った。
うどん屋から出て空を見上げると、先程まではっきりとしていた月の輪郭が朧げになっていた。
何をしていようと、時間はただ過ぎていく。眠っている間も、倒錯した性を見せつけられている間も。
アイズワイドシャットの直訳:目を大きく閉じて
オトナの社会科見学
高田馬場にあるブルセラショップに行ってきた。そういう趣味があるわけではなく、社会勉強として。
ロペ高田馬場店
http://www.rope-sibuya.com/shopguide/lineup_baba.html
ちなみに、公安委員会より古物商の認可を受けているので、店を訪問して買い物を楽しんでも問題はない。少しマニアックな古着屋という感じである。
ホームページには”制服を売りたい”という気持ちと行動が多くの人たちの笑顔を作るとあるが、どういった種類の笑顔なのだろう。
ゴーゴーカレーの隣にあるビルの9階でひっそりと営業している。大学時代、散々近くを通ったにも関わらず存在を最近まで知らなかった。灯台下暗しを地で行っていた。
雑居ビルにありがちな無愛想な灰色の扉に「一八歳未満の立ち入りを禁止する。」と表示が付いていた。
8割程度閉まっている扉を開けて店内に入ると、人ひとりが通れるかどうかという狭い通路があり、両脇に夥しい数の制服がかけられていた。
男の業を煮詰めたような匂いが漂っているかと予想していたが、古着屋特有の”あの”匂いだけが漂っていた。
店内にある制服は高校指定のものから、ファミレスや大手企業の受付嬢のものまで多岐にわたっていた。
値段は5~10万円が多く、壁の高いところには20~40万円するものが吊るされていた。
値段は概ね学校(企業)の偏差値や知名度に比例していた。慶●女子や桜●の制服は高かった。
値段の表記が、10万円以上のものは「xx萬円」であり、1桁万円のものは「x0000円」であった。謎のこだわりを感じたが、数字3桁ごとにカンマを打って欲しい。
制服コーナーの奥に下着コーナーがあった。ブラジャーやパンツが握り拳より小さいくらいのサイズに折り畳まれ、ビニール袋に梱包され、小さめのラックに押し込まれている。1枚3,000円~5,000円が多く、匂いがキツいほどマニアの中では価値が高いらしい。
ラックのすぐ上に監視カメラがあった。狭く物陰だらけの店内で、万引き防止のために設置しているのだとは思うが、下着を物色している姿を撮影されるのはあまり良い気分ではなかった。
商品によっては、着用者の顔及び体を写したポラロイド写真が添付されている。
写真は希望者のみ店で下着を売る際に撮影されるらしい。
着衣のまま照れている厚化粧の女性、売ることに慣れているのか、ブラジャーを少しずらし乳輪を見せながら親しい友人に見せるような屈託の無い笑顔を浮かべる女性の一瞬を切り取った1枚が添えられていた。
そんな中、制服を着用した18~19歳と思われる化粧っ気の無い少女が、悲痛な面持ちで俯き加減に収められている写真にぶつかった。
売ることに慣れておらず、気恥ずかしさのあまりそうした表情を浮かべているだけであり、得た金は友達と行くディズニーランドで使っていて欲しかった。
家族が作った借金返済のために体を売らなければならず、手始めに下着を売って小金を作った・・・なんてことはあって欲しくないが、それを思わせるような痛切な表情を浮かべているように思えた。
赤の他人が気にしても仕方ないが、煮え切らない思いは残った。
話は変わって、店の利用者の中には銀行員・教員が多いらしい。
お堅い職業の人に限って、実は・・・というありがちすぎるパターンであるが、ブルセラショップの店長がそう言っているのでそうなのだろう。
自分が訪れた時はいなかったが、身体障害者も多く利用するらしい。性欲を晴らしに風俗店に行こうにも、体に障害を抱えていると断られる場合が多いため、こうした店に流れてくるという流れだそうだ。
制服や下着の匂いで興奮するヘンタイ親父しか利用しないと思っていたが、切実な理由で利用する人もいることも頭の片隅に置いておこうと思った。
古着屋の匂いを粘膜に感じながら物思いに耽っていると具合が悪くなってきたので店を後にした。
外階段を使って下階に降りる最中、ビルマ語が書かれたビラを何枚も目にした。
慣れ親しんだ一角でありながら、自分にとって全くの異世界であるビルから出て見慣れた景色を取り戻した。
ガード下に描かれた手塚治虫作品のキャラクター達が、心なしかくすんで見えた。
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新世界より
貴志祐介の長編小説に「新世界より」というのがあって、大学4年の夏休みに貪るように読んだ。
文庫版に上・中・下があって全部で1500ページくらいあるのだが、
1日10時間×2日で一気に読み切ってしまった。
子供の時にズッコケ三人組を読んだ時のような、ページを繰る手が止まらない感覚を久々に味わった。娯楽小説の最高峰だと思う。
オタクの読書録はさておき、ある時に大阪の新世界に行った。
言わずと知れた通天閣のお膝元で、コテコテの大阪といった観光地なわけだが、もう何度も行っていたので大して観光せずにポルノ映画館に行った。
最初から疚しい気持ちがあったわけではなく、喫茶店が混んでいてどこも入れなかったり、
直前にNHKのBSプレミアムで日活ロマンポルノの真面目なドキュメンタリーを見て興味を持っていたからであって、
疚しい気持ちは本当に3ミクロン程度しかなかった。
<参考>
ついにNHKが日活ロマンポルノを検証!数々の名作、映画人を輩出した伝説を解く「ロマンポルノという闘い日活・どん底からの挑戦」を放送! - シネフィル - 映画とカルチャーWebマガジン
http://cinefil.tokyo/_ct/17013457
そんなこんなで喫茶店代わりの座って休める場所としてポルノ映画館にピットインした。
入場料600円で一回入れば1日居れる仕組みだったと思う。安い。
入り口はこんな感じ。
無事席に着き、小学生の格好をした30絡みの男とケバケバしい女が繰り広げる赤ちゃんプレイの映像を2分ほど見つめていた。
イメージ的にはこたえてちょーだい!の再現ドラマに近い(伝われ)。
上述のどうしようもない絵面に負けず劣らず、周りの様子がどうもおかしい。
客が男しかいないのは分かるが、音声が途切れる度に「んンッ・・・ハアァ・・・ウッ・・」
といった明らかに穏やかではない野太い声が聞こえてくる。
おかしいと思って周りを見渡すと、隣の席のオヤヂの股間に頭をうずめるオヤヂ、
座席の後ろの方にあるスペースで立っている男の後ろにぴったりくっついて腰を振っている白髪の爺さんetc.がいた。
この時点で既に邪悪な空間に迷い込んでしまったことに気付き席を離れようとしたが、
絶妙のタイミングで通路側2つ隣の席に若い男が座ってきたため、
スクリーンに映し出される地球で一番無益な動画を眺めるアディショナルタイムが発生した。
スクリーン
──────────────
通路|● 〇 ● 〇|壁
↑男 ↑僕
といった具合に、出口を塞がれてしまった。
頃合いを見て「前すいません・・・」と言って
席から立とうと思っていた矢先、男が席を一つずれて自分に近づいてきた。
スクリーン
──────────────
通路|〇 ● ● 〇|壁
男↑ ↑僕
最初は「この人には映画を見るためのベストな角度があるんだろう」と希望的観測を持っていたが、
右腕をそわそわ動かしてこちらのプライベートエリアに侵入してきた時点で流石に身の危険を感じたため、
「アッ、前すみませ…」とかすれた声で伝え無理やり席を立った。
凄く悲しそうな驚いたような表情をされ、悪いことをしている気持ちになった。
ひとまず席を離れることに成功したため、自販機とベンチがある休憩所に向かった
(通常の映画館とは異なり、座席の後ろに広いスペースとか同じ空間に休憩所がある)。
コーラでも飲んで一服しようかと思ったら、凄い存在感を放つメイド服姿のおじさんがいた。
メイド服を纏っているとはいえ、当時の僕にはこう見えた↓。
Z級妖怪の僕は威圧感に圧され、コーラを買うことも出来ず休憩所を後にした。
気を取り直して用でも足そうと思い、トイレに向かった。
悪いことは続くもので、今度は個室から子泣き爺そっくりの老人2人が極めて粘着質な笑みを浮かべながら出てくる場面に出くわした。
あえて彼らが何をしていたか考えることもしなかったが、本当に泣きそうになった。
何とか用も足したところで気を取り直し、座席後ろの空間で映画を立ち見していた。
すると80代くらいの全身から性欲を放出している爺さんが近付いてきて、
E.T.が主人公と指を合わせるかの有名なシーンが如く体を触られそうになった。
それまでは痴漢されている女の子が恐怖で声をあげられないという事象はあまり信じていなかったが、少しだけ気持ちを理解できる気がした。
気にしたことが無かったが、性欲が滲み出ている男の顔は怖い。
人間の性欲という業について思慮を巡らせ、一つ大人になった。
デューク東郷
ゴルゴ13が好きだ。
自分はどちらかで言えば完全にファンの側なので、デューク東郷という人名がどの程度人口に膾炙しているか知らないが、念のため紹介するとこの人↓である。
”括約筋”だけで出生国を見抜くとは只者ではない(只者ではないが)。
出会ったのは中1の頃。トリビアの泉か何かで見た。
初めて知ったときはただのネタ漫画だろうと思っていたが、実際に読んでみるとこれがまた面白い。
中学生~高校生くらいまで、結構な頻度で読んでいたし、テレ東で放映されたアニメもちゃんと見ていた。
アニメの放映中は地元の友達S君と会うたびにゴルゴ13の話をし、cv.舘ひろしが最高にシブいだのエンディングがイカしてるだの頭の悪い会話を繰り返していた。
高3の時のセンター試験本番の前日も日本史の一問一答ではなくゴルゴ13の単行本を開いていたし、本番当日の朝も早く起きすぎてしまったので家でゴロゴロしながら読んでいた。
ちなみにセンター試験は爆死し、滑り止めにすら落ちた。
話が逸れたが、自分の青春時代はゴルゴ13と共に合ったと言っても過言ではない。
大学に入ってからあまり読まなくなったこととセンター試験の結果は関係ない。たぶん。
よくある話の流れとしては
①国際政治の大物(もしくは団体の幹部)が敵国(及びライバル的存在)を消すことを目論見てゴルゴに暗殺を依頼する
②ゴルゴが娼婦(及び行きずりの女)を抱く
③ターゲットを殺す・戦う
④ゴルゴがクールに去っていく
というもので、もちろん水戸黄門のように同じパターンの話を永遠に続けているわけではないが、多いのは上記の流れである。
この漫画の一番の見どころは恐らく
④の暗殺・戦闘シーンであるが、
③のベッドシーンにもかなり力が入っている。
インターネットの魔窟ヤフー知恵袋にもこんな質問が転がっていたりもする。
さいとう・たかを先生はエッチだと思う。
本当のキッズか子供のフリをしたむさ苦しいおじさんかは分からない。
画面の向こうに誰がいるのか分からないのがインターネットの良いところだ。
参考までに貼っておくとこんな感じ。
1枚目は獣のような表情であるにも関わらず、2枚目は完全に無表情である。
このあたりの対比も興味深い。
不感症の女性を一発で昇天させるテクニック、
そしてどんな女性も満足させる大砲を搭載したゴルゴは男の憧れ全てを兼ね備えていると言えよう。
自分の股にぶら下がった小ぶりなシメジを見下ろして溜息が漏れた。
細かいことはさておき、一連の濡れ場は非常に官能的だと思う
(※個人の感想です)。
一歩間違えたらゴルゴ13で精通を迎えていたと思うし、
思春期からこのような不健全な漫画に触れたことにより性的嗜好が歪んだ可能性は否めない。
彼が抱くのは大概は娼婦であるが、行きずりの女と関係を持つこともある。
ゴルゴからアプローチをかけることはほとんど無く、大体は女の方から寄ってくる。
女性の積極性で言うと、江國香織の小説に近い。
江國香織作品に出てくる年上の女性は常に性欲を持て余しており、気付いたら男性の家に転がり込んでいる。
劇画で描かれるスナイパーの漫画と多くの平仮名で紡がれる女性向けの恋愛小説の近似性を感じずにはおれない。
ゴルゴ13が完全分業制で描かれていることは有名だ。
背景を描く人・モブキャラを描く人・銃を描く人など、
10人程度のスタッフが手分けして製作しているそうだ。
もちろんその中に、
ベッドシーンを描く人
がいると思う。
銃を描く人や主要人物を描く人にいじめられていなければいいが、
劇画のエロ絵を描く仕事というのもなかなかレアだと思う。
こんなことを文章にしたためつつ、
大変失礼ながら広瀬すずが炎上するきっかけになった発言が頭を過った。
「きっと大人になって年齢重ねると
共に本当に劇画を・・・
エロ絵を描くだけでいいの?」
なんてことを思ってしまった。
しかし、よく考えてみたら国民的長寿連載漫画の一部を製作すること以上に
有意義な仕事をしているサラリーマンなどそうそういないと思う。
ゴルゴ13の連載がいつまで続くか分からないが、
濡れ場担当のスタッフには頑張ってほしい・・・と切に願う。
愛知県豊橋市
中日の藤井淳志選手が豊橋市出身で豊橋市民球場で行われる試合では鬼のように活躍するとか、知っているのはそれくらい。
※画像はタイロン・ウッズ
仕事は一向に覚えないのに贔屓でもない野球チームの外野手のどうでもいい情報は頭の片隅に残り続けている。
きっと、自分の脳をトリビアの泉でいうところのメロンパン入れ的にパカっと開いて記憶を司る部分を取り出してみたらひどくいびつな形状をしていると思う。
大学1年の終わり頃、そんな豊橋で野宿をした。東京と京都を18きっぷで往復していたので、適当なところで夜を明かそうと思ったのだ。
愛知県の中でもそれなりに(?)栄えている方の都市であるらしく、0時過ぎになっても駅前の建物は街灯で煌々と照らされていた。
夜を明かす場所を探そうと飲食店が立ち並ぶメインストリート的な通りを歩いた。
いくら栄えているとはいえ、夜中にしてはやけに人が多い。
最初の数分は気が付かなかったが、よくよく見るとそこにいる人間の9割以上がヤンキーだった。
足立区や川崎にヤンキーが多いのは知っていたが、愛知県の東端にもヤンキーの名産地が存在していたのだ。
トヨタ自動車は「現地現物主義」と言って、常に現地に行き現物を確認することを重視しているが、まさしくその通りだと思った。
現地に行き(ヤンキーの)現物を確認することで初めて分かることは多い。
分かったことその① 数がとにかく多い。
大通りの約50mに冗談ではなく90~100人はいた。
なぜそんな密度で存在出来るかというと、歩道にある
ガードパイプ1つに平均3人のヤンキーが座っているからだ。
彼らは当たり前のように歩道側ではなく車道側を向いて座っていた。
恐らく、自分は車が突っ込んでくることなど怖くない、生物として強い漢なのだと周囲にアピールするためだろう。
何もガードパイプにだんご三兄弟のように並んでまで駄弁らなくても・・・とは思うが、彼らには語り合いたい内容があり、共有したい仲間がいるのだ。
もちろんただのヤンキーだけではなく、暴力団員らしき面々もいた。
コンビニの前に黒塗りの高級そうなセダンが駐車しており、それを囲むように趣味の悪いスーツを身に纏った柄の悪いお兄さんたちがこれまた12人程度いた。
何でもかんでも頭数が多すぎる。
分かったことその② 銀行の駐車場でダンスの練習を行う
駅前のナンチャラ銀行の駐車場でこれまたヤンキーがダンスの練習をしていた。これまた15人くらい。多い。
練習している曲は大方の予想を裏切らずEXILEだったが、音量はかなり控えめにしていた。
見た目が少しイカついだけで中身はまともなのかもしれないと思った。まともだったら銀行の駐車場でEXILEなど踊らないが。
そもそも論、深夜に仲間とダンスの腕を磨くのは輝かしい青春の1ページだとしても、わざわざ平日の日中は社畜がヒーコラ言いながら労働に従事している金融機関の敷地内で行うことはないだろう。
彼らなりに、
「公園なんか子供の遊び場だしw」
「公立の体育館なんか年寄りしかいなくてダセえしww」
等々の考えがあるのだと思う。見栄を張りたい年頃だから。
現地現物で分かったこと編はひとまず置いておいて、当時の自分は落ち着いて夜を明かすべく駅から少し離れたところを散策し、人気のない公園に上陸した。
ベンチで横になって休もうとした瞬間に、いきなり何者かに声をかけられた。
ただでさえ真夜中に見知らぬ土地を彷徨し、心細さのあまり捨て犬のように震えている状況で声をかけられたので本当に心臓が止まるような思いであった。
しかもつい先刻までヤンキーの大群を目の当たりにしていたこともあり、間違いなくカツアゲだと思った。
しかし、そこにいたのは幸か不幸か妖怪人間ベラそっくりのチャイニーズ立ちんぼであった。
明らかに顔を美容整形でいじりまくった痕跡があったし、胸はパッと見でKカップくらいあった。顔の不自然さで言うと亡くなる直前のマイケル・ジャクソンと並ぶ。
明日花キララもびっくりの紛うことなきサイボーグがそこには立っていた。
世の中には「親から貰った体を大事にしろ!」などと言って入れ墨や整形を忌み嫌う頭の固いオジサンやオバサンがいて、自分としては人の自由だろと思っているのだが、この人造人間ベラに遭遇した時はオジサンやオバサンの言いたいことが分かる気がした。
しかも、そのベラが
「3000円でフ●↑ラ↓するゥ~!5000円で本番ネ~!」
と言いながらかなり強い力で僕の腕を掴み、シリコンを大量に詰めたであろう胸に押し当ててくるので参った。無機物に興味はないのだ。
3分くらいしつこく誘ってくるので、
「500円で全部させてくれ」
と言ったらどこかに消えていった。今までの時間は何だったのだ。
一旦は平和を取り戻し、今度こそ寝ようとしたところでまた何者かが声をかけてきた。今度は立ちんぼを斡旋しているらしいおばさんだった。
「若くてかわいい子がいるから付いて来なさい」
ということを言われたが、10分前に遭遇した人造人間の記憶を踏まえると、この人は「若くてかわいい」という日本語の意味をはき違えていると考えるのが妥当だった。
学習教材か講師が悪い。このおばさんは悪くない。
彼女の日本語の語彙がどうであれ、あまりにもしつこく誘ってくるので
「若い子ではなくあなたとしたい」
」と伝えたらそそくさとどこかへ消えていった。中国人とは相性が悪い。
振り返ってみると楽しい思い出のような気がするが、当時はそれなりにしんどかった。
この一夜以降、野宿はしないことにした。
赤羽の格安ピンサロに行ったら白鵬が出てきた回
今年の2月頃、思い立って赤羽のピンサロに行った。
普段は風俗に行くことなど滅多に無いが、その日は程よく酒を飲み上機嫌であった
こと、また社会人になり自由に使える金が微妙に増えたこともありサクッと風俗でも行くかと思い立った。
赤羽にしたのは帰り道の途中だったから。
面倒なので大してサーベイもせずに昭和の香り漂う格安のピンサロに特攻した
(大塚にあるような激安店ではない)。
値段は確か20分2回転で6000円かそこら。学割が効かないのが痛い。
自分は比較的ストライクゾーンが広い方だと思っているし、風俗嬢に対して求めることもあまり無いのでフリーで入った。
値段が値段なので目を瞠るような美女が現れるとは思っていなかったが、かの大横綱である白鵬に姿かたちが酷似した女性が「あやかです♪」というノイズと共に現れた瞬間は血の気がサーっと引いていくのが分かった。
一瞬どころか数秒は事態を飲み込めずにいたが、白鵬から筋肉をそげ落としたような、言ってしまえばミシュランマンのような体型の全裸の女性が自分の体に触れた段階でようやく現実を直視出来た。
その時は既に蛇に睨まれた蛙よろしく一切の身動きが取ることが出来なくなっていた。
風俗に関して明るくないので分からないが、ピンサロでも「チェンジ」というものは使用出来るのであろうか。
どちらにしろ余りの恐怖で喉がカラカラに渇き声を発することが出来なかったので関係ないことではあるが。
プレイタイムの10分間に何が行われていたか、記憶が抜け落ちているので
仔細を記すことは出来ないしする必要も感じないが、悪夢のような時間を過ごし顔の筋肉が引き攣っていたことだけは確かである。
↓悪夢の10分間を過ごす僕のイメージ図
\\
未知との遭遇を経て人間として二回り成長した僕は2人目の嬢と対峙した。
鬼が出るか蛇が出るかという気持ちでそわそわしていたが、キツネ顔の美人が出てきたおかげで大相撲赤羽場所の苦い感情がキレイさっぱり流れていくのを感じた。
コンビニの店員だったとしたら一回の勤務で数十人のサラリーマンに生きる
活力を与えることが出来るであろうルックスの彼女がどうしてモンゴル出身の最強力士と同じ風俗店に勤務しているのだろうと不思議に思ったが、片方の胸が無かった。
初めに「胸無いんだけどいい?」と聞かれ、貧乳という意味なのだろうと思ったが、先っぽの方が無かった。
病気の治療で乳房を切除したのだろうが、特に気にもならないし、向こうも触れられたくはないだろうから何も聞くまいと決意した。
彼女の性格は知らないが、心の痛みを知り尽くしたことから来るような妙な腰の低さが感じられ、少し胸が痛んだ。
店を後にし、白鵬似の女性に性的なサービスを施された(と思われる)事による
自己嫌悪や、体の一部を失ってなお風俗店に勤務する女性を目の当たりにしたやるせなさが脳みその中でないまぜになっていた。
何も考えない為に、乾燥しきった夜の空気を吸っては吐くことに集中した。