誰も知らない

備忘録

新世界より

貴志祐介の長編小説に「新世界より」というのがあって、大学4年の夏休みに貪るように読んだ。

文庫版に上・中・下があって全部で1500ページくらいあるのだが、

1日10時間×2日で一気に読み切ってしまった。

子供の時にズッコケ三人組を読んだ時のような、ページを繰る手が止まらない感覚を久々に味わった。娯楽小説の最高峰だと思う。

 

オタクの読書録はさておき、ある時に大阪の新世界に行った。

言わずと知れた通天閣のお膝元で、コテコテの大阪といった観光地なわけだが、もう何度も行っていたので大して観光せずにポルノ映画館に行った。

 

最初から疚しい気持ちがあったわけではなく、喫茶店が混んでいてどこも入れなかったり、

直前にNHKBSプレミアムで日活ロマンポルノの真面目なドキュメンタリーを見て興味を持っていたからであって、

疚しい気持ちは本当に3ミクロン程度しかなかった。

 

<参考>

ついにNHKが日活ロマンポルノを検証!数々の名作、映画人を輩出した伝説を解く「ロマンポルノという闘い日活・どん底からの挑戦」を放送! - シネフィル - 映画とカルチャーWebマガジン
http://cinefil.tokyo/_ct/17013457

 

そんなこんなで喫茶店代わりの座って休める場所としてポルノ映画館にピットインした。

入場料600円で一回入れば1日居れる仕組みだったと思う。安い。

 

入り口はこんな感じ。

 

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無事席に着き、小学生の格好をした30絡みの男とケバケバしい女が繰り広げる赤ちゃんプレイの映像を2分ほど見つめていた。

イメージ的にはこたえてちょーだい!の再現ドラマに近い(伝われ)。

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上述のどうしようもない絵面に負けず劣らず、周りの様子がどうもおかしい。

客が男しかいないのは分かるが、音声が途切れる度に「んンッ・・・ハアァ・・・ウッ・・」

といった明らかに穏やかではない野太い声が聞こえてくる。

 

おかしいと思って周りを見渡すと、隣の席のオヤヂの股間に頭をうずめるオヤヂ、

座席の後ろの方にあるスペースで立っている男の後ろにぴったりくっついて腰を振っている白髪の爺さんetc.がいた。

 

 

 

 

 

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この時点で既に邪悪な空間に迷い込んでしまったことに気付き席を離れようとしたが、

絶妙のタイミングで通路側2つ隣の席に若い男が座ってきたため、

スクリーンに映し出される地球で一番無益な動画を眺めるアディショナルタイムが発生した。

 

  スクリーン

──────────────

通路|  〇 ● 〇|壁

    ↑男    ↑僕

 

といった具合に、出口を塞がれてしまった。

頃合いを見て「前すいません・・・」と言って

席から立とうと思っていた矢先、男が席を一つずれて自分に近づいてきた。

 

 

 

 

 

 

 

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  スクリーン

──────────────

通路|〇 ● ● 〇|壁

    男↑ ↑僕

 

 最初は「この人には映画を見るためのベストな角度があるんだろう」と希望的観測を持っていたが、

右腕をそわそわ動かしてこちらのプライベートエリアに侵入してきた時点で流石に身の危険を感じたため、

「アッ、前すみませ…」とかすれた声で伝え無理やり席を立った。

 

凄く悲しそうな驚いたような表情をされ、悪いことをしている気持ちになった。

 

ひとまず席を離れることに成功したため、自販機とベンチがある休憩所に向かった

(通常の映画館とは異なり、座席の後ろに広いスペースとか同じ空間に休憩所がある)。

 

コーラでも飲んで一服しようかと思ったら、凄い存在感を放つメイド服姿のおじさんがいた。

メイド服を纏っているとはいえ、当時の僕にはこう見えた↓。

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Z級妖怪の僕は威圧感に圧され、コーラを買うことも出来ず休憩所を後にした。

 

気を取り直して用でも足そうと思い、トイレに向かった。

悪いことは続くもので、今度は個室から子泣き爺そっくりの老人2人が極めて粘着質な笑みを浮かべながら出てくる場面に出くわした。

あえて彼らが何をしていたか考えることもしなかったが、本当に泣きそうになった。

 

何とか用も足したところで気を取り直し、座席後ろの空間で映画を立ち見していた。

すると80代くらいの全身から性欲を放出している爺さんが近付いてきて、

E.T.が主人公と指を合わせるかの有名なシーンが如く体を触られそうになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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それまでは痴漢されている女の子が恐怖で声をあげられないという事象はあまり信じていなかったが、少しだけ気持ちを理解できる気がした。

気にしたことが無かったが、性欲が滲み出ている男の顔は怖い。

 

人間の性欲という業について思慮を巡らせ、一つ大人になった。