誰も知らない

備忘録

愛知県豊橋市

豊橋といえばカレーうどんが有名らしい。

中日の藤井淳志選手が豊橋市出身で豊橋市民球場で行われる試合では鬼のように活躍するとか、知っているのはそれくらい。

 

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※画像はタイロン・ウッズ

 

仕事は一向に覚えないのに贔屓でもない野球チームの外野手のどうでもいい情報は頭の片隅に残り続けている。

 

きっと、自分の脳をトリビアの泉でいうところのメロンパン入れ的にパカっと開いて記憶を司る部分を取り出してみたらひどくいびつな形状をしていると思う。

 

 

大学1年の終わり頃、そんな豊橋で野宿をした。東京と京都を18きっぷで往復していたので、適当なところで夜を明かそうと思ったのだ。

 

愛知県の中でもそれなりに(?)栄えている方の都市であるらしく、0時過ぎになっても駅前の建物は街灯で煌々と照らされていた。

 

夜を明かす場所を探そうと飲食店が立ち並ぶメインストリート的な通りを歩いた。

 

いくら栄えているとはいえ、夜中にしてはやけに人が多い。

 

最初の数分は気が付かなかったが、よくよく見るとそこにいる人間の9割以上がヤンキーだった。

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足立区や川崎にヤンキーが多いのは知っていたが、愛知県の東端にもヤンキーの名産地が存在していたのだ。

 

トヨタ自動車は「現地現物主義」と言って、常に現地に行き現物を確認することを重視しているが、まさしくその通りだと思った。

 

現地に行き(ヤンキーの)現物を確認することで初めて分かることは多い。

 

分かったことその① 数がとにかく多い。

大通りの約50mに冗談ではなく90~100人はいた。

 

なぜそんな密度で存在出来るかというと、歩道にある

ガードパイプ1つに平均3人のヤンキーが座っているからだ。

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彼らは当たり前のように歩道側ではなく車道側を向いて座っていた。

 

恐らく、自分は車が突っ込んでくることなど怖くない、生物として強い漢なのだと周囲にアピールするためだろう。

 

何もガードパイプにだんご三兄弟のように並んでまで駄弁らなくても・・・とは思うが、彼らには語り合いたい内容があり、共有したい仲間がいるのだ。

 

もちろんただのヤンキーだけではなく、暴力団員らしき面々もいた。

 

コンビニの前に黒塗りの高級そうなセダンが駐車しており、それを囲むように趣味の悪いスーツを身に纏った柄の悪いお兄さんたちがこれまた12人程度いた。

 

何でもかんでも頭数が多すぎる。

 

分かったことその② 銀行の駐車場でダンスの練習を行う

駅前のナンチャラ銀行の駐車場でこれまたヤンキーがダンスの練習をしていた。これまた15人くらい。多い。

 

練習している曲は大方の予想を裏切らずEXILEだったが、音量はかなり控えめにしていた。

 

見た目が少しイカついだけで中身はまともなのかもしれないと思った。まともだったら銀行の駐車場でEXILEなど踊らないが。

 

そもそも論、深夜に仲間とダンスの腕を磨くのは輝かしい青春の1ページだとしても、わざわざ平日の日中は社畜がヒーコラ言いながら労働に従事している金融機関の敷地内で行うことはないだろう。

 

 彼らなりに、

 

「公園なんか子供の遊び場だしw」

「公立の体育館なんか年寄りしかいなくてダセえしww」

 

等々の考えがあるのだと思う。見栄を張りたい年頃だから。

 

 

現地現物で分かったこと編はひとまず置いておいて、当時の自分は落ち着いて夜を明かすべく駅から少し離れたところを散策し、人気のない公園に上陸した。

 

ベンチで横になって休もうとした瞬間に、いきなり何者かに声をかけられた。

 

ただでさえ真夜中に見知らぬ土地を彷徨し、心細さのあまり捨て犬のように震えている状況で声をかけられたので本当に心臓が止まるような思いであった。

 

しかもつい先刻までヤンキーの大群を目の当たりにしていたこともあり、間違いなくカツアゲだと思った。

 

しかし、そこにいたのは幸か不幸か妖怪人間ベラそっくりのチャイニーズ立ちんぼであった。

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明らかに顔を美容整形でいじりまくった痕跡があったし、胸はパッと見でKカップくらいあった。顔の不自然さで言うと亡くなる直前のマイケル・ジャクソンと並ぶ。

 

明日花キララもびっくりの紛うことなきサイボーグがそこには立っていた。

 

 

世の中には「親から貰った体を大事にしろ!」などと言って入れ墨や整形を忌み嫌う頭の固いオジサンやオバサンがいて、自分としては人の自由だろと思っているのだが、この人造人間ベラに遭遇した時はオジサンやオバサンの言いたいことが分かる気がした。

 

しかも、そのベラが

 

「3000円でフ●↑ラ↓するゥ~!5000円で本番ネ~!」

 

と言いながらかなり強い力で僕の腕を掴み、シリコンを大量に詰めたであろう胸に押し当ててくるので参った。無機物に興味はないのだ。

 

3分くらいしつこく誘ってくるので、

 

「500円で全部させてくれ」

 

と言ったらどこかに消えていった。今までの時間は何だったのだ。

 

一旦は平和を取り戻し、今度こそ寝ようとしたところでまた何者かが声をかけてきた。今度は立ちんぼを斡旋しているらしいおばさんだった。

 

「若くてかわいい子がいるから付いて来なさい」

ということを言われたが、10分前に遭遇した人造人間の記憶を踏まえると、この人は「若くてかわいい」という日本語の意味をはき違えていると考えるのが妥当だった。

 

学習教材か講師が悪い。このおばさんは悪くない。

 

彼女の日本語の語彙がどうであれ、あまりにもしつこく誘ってくるので

「若い子ではなくあなたとしたい」

」と伝えたらそそくさとどこかへ消えていった。中国人とは相性が悪い。

 

振り返ってみると楽しい思い出のような気がするが、当時はそれなりにしんどかった。

この一夜以降、野宿はしないことにした。