誰も知らない

備忘録

目を大きく閉じて

新宿三丁目ハプニングバーに行ってきた。オタクとの飲み会のノリで。

 

23時か0時ころに入店。入会金と利用料金で9,500円くらい(?)取られた。酔っていたのでうろ覚え。

店内は薄暗く、ゴテゴテした内装のお洒落めなバーといった風情だった。

 

それまで、ハプニングバーの店内は映画『アイズワイドシャット』の儀式シーンのような空間をイメージしていたので、ソファで男女が酒を飲みながらただ談笑している様を見て拍子抜けした。

 

↓『アイズワイドシャット』の儀式シーン

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カウンターで飲み物を貰い、ソファに座り、近くにいた若い男性2人組・三十路くらいのふくよかな女性2人組とどうしてここに来たのか、お友達同士なのか、など取り留めの無い会話をしていた。

客の脳内にはエロいことしか頭に無いのかと思いきや、そうでもなかった。

空間の特性上か、ボディタッチは一般的な空間に比べると多かった。

初対面でもぐいぐいパーソナルスペースに入ってくる。人の体温を感じたのは久しぶりだった。

 

知らない人達と酒を飲み、くつろぎながら話をすることは既に経験があって何だか懐かしい気がした。

どこで経験したかな、と考えユースホステルやゲストハウスの類であることに思い当たった。

他人に関心が無い、人と人の繋がりが無いと言われる現代の都会において、気安いコミュニケーションを促す旅先のゲストハウス的な施設がこんなところにあった(来店の目的が何であれ・・・)。

 

話は戻り、先ほどの女性達・男性達と話している内、女性の片割れが若い男性をそれとなく誘惑しはじめた。

店内が暗くよく見えなかったが、男性はイマドキな雰囲気で割とイケていた。

誘いに応じるかな、と思ったがのらりくらり躱していた。女性はあまり美しくなかった。

性的な関係を結ぶにあたり、美しくないことは罪だった。

 

 ソファ席以外にもカウンター席があって、客が1人だけ座っていた。

自分のことを棚にあげて言えば、冴えないおじさんだった。

レンタルビデオ屋のAVコーナーによくいるような、エロイことは大好きだけど、生身の女性に触れる機会はあまり無く、あっても風俗だけ・・・といった、年季の入った負のオーラを放つおじさんだった。

おじさんは1人ぽつねんと座っていて、女性に話しかけようともしていなかったので他人の行為を見に来ているのだろうと思った。

世の中にはいろんな性的嗜好を持った人がいるものだ。パソコンの画面越しでは味わえないライブ感を楽しんでいるのだろう。

 

そうこうしている内に連れのオタクが女性と良い雰囲気になり、プレイルームに消えていった。

今までの人生で最も滑らかに「性の悦びを知りやがって」というフレーズが口をついて出た。性の悦びを知りやがって。

 

いつの間にか、 フロアの真ん中で若めの男性が全裸に目隠しを付けた状態で横になっており、その人の性器(中々見ない程の立派なサイズ!)を刺激してイカせようとするゲーム(?)が始まっていた。

上はYシャツ、下はパンツ一枚という非常にあざとい恰好の、比較的かわいらしい女性が手や口で刺激していた。

多少の妬み嫉みはあったかもしれないが、赤の他人の性行為を間近で見せつけられるのは気持ちのいいものではなかった。

その内、ブリーフ一丁のおじさんが現れ、同様に男性のイチモツを手でしごいたり、口に含んだりし始めた。サービスを受けている本人は目隠しされているから分からないだろうが、どんな気持ちだっただろう。

倒錯した性を目の当たりにし、気分が悪くなった。

25歳、彼女無し、土曜の深夜に他人の性行為を眺めている・・・。

見たくないものを見ないように目を閉じていたら眠りについていた。

 

起きると既に朝5時頃であり、閉店の時間になっていた。

場のムードを作っていた暗めの照明とは打って変わって、風情も容赦も無い蛍光灯で店内が照らされていた。

店内の照度が変わったこと、ほとんどの客が店を後にしていることから、先程までと同じ空間とは思えなかった。

多少華美なきらいはあるもののお洒落めに見えていた内装も、ただ無機質で悪趣味なインテリアにしか見えなかった。

もしかすると、『アイズワイドシャット』よろしく、先刻まで見ていた光景は夢だったのかもしれない・・・と馬鹿げたことを考えた。

 

店を後にし、たまたま見かけたうどん屋でかすうどんを食べた。

朝5時過ぎにも関わらず、店内は満員だった。安くてかなり美味しかったのでそれだけの人気があることに不思議は無かった。

うどんを食べながら、性の悦びを堪能し、賢者タイム真っただ中のオタクが「世界の真理が見えるようになった」と熱弁するのを聞いていた。

ハプニングバーで行為に及ぶと世界の真理が見えるようになることを自分はその時初めて知った。

 

うどん屋から出て空を見上げると、先程まではっきりとしていた月の輪郭が朧げになっていた。

何をしていようと、時間はただ過ぎていく。眠っている間も、倒錯した性を見せつけられている間も。

 

アイズワイドシャットの直訳:目を大きく閉じて